猫の慢性腎臓病についてのお話

近年、猫や犬も高齢化が進み、年齢とともに増加する病気を見かけることが多くなりました。なかでも高齢の猫の慢性腎臓病の発生は非常に多く、最も身近な病気のひとつです。
慢性腎臓病とはどのような病気なのか、診断や治療について説明します。

【1】慢性腎臓病とは?

【1】慢性腎臓病とは?

慢性という名前がついているように、腎臓の働きが月単位から年単位で徐々に悪くなる病気です。

急激に変化が現れないために、なかなか病気であることに気がつきにくいことが特徴です。

食欲不振や嘔吐などの症状が出て異常に気がついた頃には腎臓の働きが残り1/4を下回っていたということも珍しくありません。

しかし実はどのような点に気をつければ良いのかを知っておけば、うまく付き合うことができる病気なのですが、そのためにまずは正常な腎臓の働きについて説明します。


腎臓の働き 

基本的にはヒトも動物も同じで、以下の3つが挙げられます。

Ⅰ.尿の産生

Ⅱ.体液のバランスの調整

Ⅲ.ホルモンの産生

Ⅰ.食事によりタンパク質を摂取すると、身体の中でエネルギーを生み出す分、有害となる老廃物も同時に生まれます。この老廃物は腎臓で尿として排泄されます。

Ⅱ.血液中に含まれる水、ナトリウム、カリウム、リン、カルシウムなどの成分のバランスを調整します。その時に尿の濃度も調節しています。例を挙げると、塩分(ナトリウム)を取り過ぎて体がむくんでも、きちんと1日で元に戻るのは腎臓が体内の水分量を調整してくれているおかげなのです。

Ⅲ.血圧を調節するホルモン(レニン)や、赤血球を骨髄で作るために必要なホルモン(エリスロポエチン)を産生しています。

Ⅰ〜Ⅲの働きが徐々にできなくなるのが慢性腎臓病という病気です。


ヒトの場合、腎臓の働きが悪くなると、尿を作る際に水をこしだす働きがおちるため身体がむくみやすくなります。

それに対して猫では、尿の濃度を調節することが出来なくなって水分が過剰に出ていくことになり、脱水を起こしてしまいます。このことは尿量が増え、喉が渇きたくさんお水を飲むということを意味します。また、老廃物である尿毒性物質が身体に貯まり、食欲が落ちたり吐いたり下痢をします。さらには、血圧が上がったり貧血を起こしたりもします。

【2】診断

【2】診断

慢性腎臓病の診断のためには以下のような検査を行ないます。

 問診

 身体検査

 尿検査

 血液検査

 血圧測定

 腹部レントゲン検査

 腹部エコー(超音波)検査

 その他

重要なことは腎臓の働きが今現在どのくらい残っているのかを調べて進行状況に合わせて必要な治療を始めることです。

腎臓の元々の働きを100%とした場合、残りの腎機能が1/3になった時に尿検査で異常が現れ始め、1/4を下回った時に初めて血液検査で異常が現れると言われています。

つまり、最も早くに腎臓病に気づくには血液検査よりも尿検査が大切だということがわかります。

尿検査について何を見ているのか、簡単に言うと尿の濃さ(尿比重)を見ています。
猫の腎臓の働きが悪くなると尿がだんだん薄くなります。

尿比重を測定する機械は人用のものでは実際の数値よりも高く算出されることがあり、初期の腎臓病を見逃してしまう可能性があるため、当院では犬猫用の尿比重計を取り入れて使用しています。


人用猫用(実際の数値)
尿比重1.0341.026
1.0461.035
腎臓病の早期発見を見逃しているかも!

【3】治療

【3】治療

慢性腎臓病は残念ながら完治はできません。しかし、長期にわたって病気の進行を遅くすることや苦痛を緩和することができます。
そのためには、尿検査や飲水量を測定することは早期発見に
非常に有効です。

具体的な治療の内容をお話しします。

Ⅰ.食餌管理

①タンパク質の制限

通常タンパク質を摂取すると身体の中で分解されて老廃物である尿素が増えます。
腎臓病が進むにつれて身体から老廃物を排泄しにくくなり、これらが悪心や吐き気につながるため、食餌中に含まれるタンパク質を制限して腎臓への負担を減らします。

②リンの制限

リンは腎臓から排泄されますが、身体に貯まると腎臓に負担がかかるため食餌中に含まれるリンを制限した療法食を給餌して腎臓への負担を減らします。もし療法食を食べない場合には、食餌に混ぜることでリンを吸着して便の中に排泄してくれるサプリメントを使います。味がほとんどないので、内服が苦手な猫でも缶詰に混ぜるなどして比較的簡単に与えることが可能です。

Ⅱ.高血圧の改善

猫の慢性腎臓病の約20%が高血圧になっているという報告があります。高血圧は慢性腎臓病やその他にもいくつかの病気の進行を早めてしまいます。そのため高血圧の猫には抗高血圧薬を使います。血圧を下げる薬を使用します。この薬も無味無臭やバニラ味で比較的飲ませやすく、液体タイプと錠剤タイプがあります。

Ⅲ.脱水の補正

定期的に点滴を行うことで尿中に過剰に排出する水分を補います。

また食餌を缶詰に変える、飲み水の器を大きくする、複数個所に設置するなどの水分を摂取しやすくする方法も自宅で行います。飼い主様による自宅での点滴も状況によっては行います。

Ⅳ.貧血の改善

腎臓から出ているホルモンを注射して貧血の悪化を防ぎます。鉄分を補うサプリメントも補助的に使います。

まとめ

慢性腎臓病に早く気付くためには、

① 自宅での飲水量のチェック

② 定期的な尿検査(尿比重)

がおすすめです。

通常1日の飲水量は体重1kgあたり50mlまでが目安です。4kgの猫ちゃんなら1日に200mlまでの飲水なら問題ありませんが、それ以上であれば慢性腎臓病などの病気の可能性があります。当院までご相談ください。

飲水量の測定も尿検査も猫に負担はありません。
猫の病気の早期発見に努め、より長く健康に過ごせる生活を目指しましょう!

当院で推奨しているシニア期の健康診断は以下の通りです。

7歳以上 半年に1回の尿検査

10歳以上 半年に1回以上の診察、尿検査

13歳以上 3ヶ月に1回の診察、尿検査、半年に1回の血液検査、ペットドック

をおすすめします。

待ち時間が取れない、性格的に病院に連れて行くことが難しい場合などはキャットアワー(猫ちゃんだけの予約診察時間)や往診も行っていますのでまずは当院までご相談ください。


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獣医師 樫村

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