腫瘍科診療

がんとは何か

細胞の遺伝子に異常が起こり、制御を失って増殖しつづけるようになった状態を腫瘍と呼びます。

「良性腫瘍」は発生した臓器だけでゆっくりと大きくなるもの。

「悪性腫瘍」は隣接する臓器の境界をこえて広がる(浸潤)能力や、 元の臓器から離れて肺や肝臓など他の臓器でも増殖を続ける(転移)能力を持ったものです。

一般的にはこの「悪性腫瘍」のことを「がん」と呼びます。

良性腫瘍でも発生した場所によっては生命に関わることがありますが、 悪性腫瘍(がん)は増殖速度が早く浸潤や転移を起こすため、 どれだけ早く発見できるかによってその後の治療の可否や治療した場合の経過が変わってきます。          

がんを早く見つけるために

からだの中では毎日多数の腫瘍細胞が生まれています。

しかし、動物のからだには異常な細胞を見つけだし排除する防御機能も備わっているため、 すぐにはがんになりません。 この防御機能をくぐり抜け腫瘍細胞が増殖を始めた時に 動物のからだの「しこり」や体調の変化に気付くことになります。

よく言われるように、がんは「早期発見」がなによりも大事な病気です。 動物病院では、「しこりを見つけた」という理由で来院される場合ももちろんありますが、 健康診断や別の理由で来院されたときに「たまたま」身体検査やレントゲン検査などで見つけることが 多いように思います。

これまでの経験から、早期発見のために以下の3つを日常的に行なうことをおすすめします。

①日頃から動物のからだをくまなく触ってしこりがないか確認する

②なにか調子がおかしいなと思ったら、すぐに病院に来て検査を受ける

③定期的に動物病院で健康診断を行なう

「しこり」を見つけたら

動物のからだにしこりを見つけた場合、「炎症」「過形成」「腫瘍」などの可能性があります。 つまり腫瘍以外のものの可能性もあるのです。

見た目や触った感じ、レントゲン検査や超音波検査などでそれらを区別することはできず、 必ず細胞を採取して確認する必要があります。

私たちががん細胞を肉眼で認識できるようになるまでには、約10億個程度(!)にまで増殖は進んでいます。

そのため、しこりが見つかった場合には早めに検査をおこなう必要があります。

検査はしこりから細胞を採取することから始まります。

「細胞診」「組織検査」という2通りの検査方法から選択します。

「細胞診」とは、しこりに細い針を刺して細胞を吸引し、個々の細胞を観察する検査です。 診察中に実施が可能なことが多く、迅速な診断が可能です。

「組織検査」とは、しこりの一部あるいはすべてを切り取って細胞の種類や周囲への浸潤度を調べる検査です。 こちらは一般的に全身あるいは局所の麻酔が必要ですが、細胞診よりも診断の精度が高い検査です。        

これらの検査でしこりが腫瘍なのか炎症なのか、腫瘍であれば良性なのか悪性なのかを判断します。

悪性腫瘍の場合には、大きさや周囲への浸潤の程度、近くのリンパ節への転移があるか、しこりから離れた部位の臓器に転移があるかどうかの分類評価(TNM分類といいます)を行ないます。

また、積極的な治療にからだが耐えうるのかどうかの評価も行います。


これらの分類により、がんの進行度合いや、治る見込みはどのくらいあるのか、どのような治療方法が 最も良い結果につながるのかということを判断します。

治療の目的を明確にする

根治治療がん細胞をすべて取り除いて完治を目指す治療です。外科療法(手術)が中心となり、必要に応じてその後の化学療法(抗がん剤)や放射線療法を組み合わせていきます。主にがんの初期から中期が適応になります。

緩和治療

がんによる苦痛や機能不全を改善することを目指す治療です。早期に転移してしまう骨の腫瘍の激痛を取り除くために行なう断脚手術などが代表的です。すでに転移が起こってしまった場合や切除不可能な場所のがんに薬剤で縮小を目指す場合や、重大な基礎疾患を持っていて麻酔や手術に耐えられない場合などが適応になります。

ターミナルケア

がんそのものに対する治療はもはや不可能となった段階で、死を迎えるまでの痛みや苦しみを取り除きながら心の落ち着きを目指す治療です。

がん治療の第一歩は上記の治療目的を明確にすることから始まります。

定められた目的を達成するために、「外科療法」「放射線療法」「化学療法」「免疫療法」「支持療法」などの治療方法があり、 どの手段が最も適しているのかを説明させていただきます。

治療方針については、ご家族と十分に話し合い決めていきます。

治療にリスクはどれくらいあるのか?

治療や検査の費用、治療期間はどのくらいかかるのか?

手術や抗がん剤で苦しむのではないか?

高齢だけれど、治療に耐えられる体力はあるのか?

これらの質問にも、納得がいくまで話し合って個々の動物とご家族にとって何が最善の道なのかを考えていきます。

ご家族にできること

動物ががんであると判った時、ご家族が受けるショックは計り知れないものがあります。おそらくはすぐに的確な判断は下せないのではないでしょうか。

私たち獣医師や動物看護師にできることは、 その動物たちの状況を正しくご家族にお伝えし検査や治療を選択していただくこと、 そしてなにより治療に対して手を尽くすことだと思います。

動物は自分の病気の治療方法について意思を示すことができません。 しかしご家族には治療を選択する権利、または拒否する権利があります。

動物と一緒に過ごしてきた時間は何事にも代え難いものであり、 最期の時を迎えるまでの時間を後悔のないものにしたいと願っています。

日常、さまざまな病気の治療をしていて動物の病気にまったく同じ状況はないと思います。

ご家族と獣医師、動物看護師がチームとなり、どうすれば動物とご家族が望んだ結果に近づくことができるのか。 一緒に精一杯答えを求め続けることがなによりも大事であると思います。

腫瘍科担当(日本獣医がん学会 獣医腫瘍科認定医) 栗崎 聡         

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